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大須賀淳
2025.10.21 20:39その他ニュース

歴史と「認知の歪み」

いやー、今週のSPA!「神功皇后論」で取り上げられていた「卑弥呼の矮小化」の下り、とても面白かった!!

 

白鳥庫吉「倭女王卑弥呼考」の一節


男尊女卑は我が古俗なりしにも拘らず、女人にして君長となれるもの多かりしは、甚だ奇異に聞ゆれども、


は、井上毅(及びそのネタ元である嚶鳴社・沼間守一)の「男を尊び女を卑しむの慣習、人民の脳髄を支配する我国」(一応は、明治期における現状についての言及)よりもさらに踏み込んでいて「卑弥呼の時代から男尊女卑こそが日本の国柄であった」という断定の元に書かれています。

 

「倭女王卑弥呼考」は著作権保護期間が終了してネットでも読めるので、取り急ぎ当該部分の前後だけですが、原典も読んでみた所、色々と引っかかる記述がありました。例えば、


若し我が國の古俗に女酋多きの故を以て、女尊男卑は我が國上代の風俗なりしと推斷せば、大なる謬見なり。


 

前の引用と併せて、白鳥の論理展開は「男尊女卑 or 女尊男卑」どちらが正しいか?という対立軸に基づいています。一方、(遺跡の発掘や検証などが現代より進んでいない明治期の言説という点に考慮は必要でも)様々な史料や痕跡などを鑑みれば「当時は、性別を問わず、力を持つ年長の者がトップに立ち君臨するという状況があったんじゃないの?」という観点が出てこなければ、それこそ「甚だ奇異」です。

 

たかが半世紀ほどを生きてきた経験の中だけでも、世の中の大半の物事は「一つのVS軸」で表せるほど単純ではないとしみじみ実感していますが、これは言い方を変えると「物事をVS軸(対立軸)に単純化しようとする論者には、最初から〝決まった答え〟がある」とも言い表せます。

 

白鳥庫吉が文中で挙げている論拠は、そこからゼロイチ思考で「男尊女卑絶対」「女尊男卑絶対」につなげるには弱いと感じるものばかりで、十万基以上に及ぶ古墳の発掘調査が進んでほぼ半数の埋葬者が熟年女性という事実が判明している現代から見るとなおさら「〝ウケの良い〟男尊女卑につなげるための恣意」を感じずにはいられません(権威になっているけど、もしかすると今の「ネトウヨ市場向け歴史本」と本質は変わらないのでは?)。

 

これと似た姿勢は、現代における皇統問題の論争にも多く見られ、「男系(男子)絶対」を唱える論者の言説は「〝女系主義者〟による侵略・簒奪への攻撃」的なものになっている事が少なくありません。

 

しかし、天皇という存在の歴史を俯瞰して見るほど(これもまたゼロイチの)「男系」「女系」を絶対化する事の無理は明らかで、それを〝あえて〟言葉にするならば〝結果として〟「双系」という事になる、と私は捉えています。

 

一方、「俯瞰的な視点」を求めるような事柄ほど「スローガン化」は難しい。

 

「男系男子絶対論」は、それが明治時代といった「最近」明文化されたものであり、たとえ「欠史八代」などの致命的な穴があっても、現在の皇室典範に記載されている(法になっている)以上、そこに固執したい論者は「ただ議論を空転させ続ければ良い」という、圧倒的有利さを持っています。

 

こんな「ややこしい問題」、やはり「政治家という〝立場〟が欲しい人」にとっては、イシュー(解決すべき問題)として率先して取り組むよりは、論理破綻していても「ゼロイチ」に与するか、距離を置いて静観するのが「クレバー」なのでしょうね。

 

そうした「お利口さ」は、論理や現状の問題といった要素を「認知」する事から逃避する、言い方を変えると「歪ませ」ないと成立しません。

 

本来、人間の精神は「認知の歪み」に対してストレスを感じるように出来ており、そこへの呪縛を強いられると「病んで」しまいます。

 

その状況への防御機能の一つが、道理から外れる事へのストレス感知を麻痺させ、鈍感になる事。この状態を表した言葉が、いわゆる「サイコパス」です。

 

現在の皇室の状況、皇族の心情への共感を「パス」して原理主義を唱えられる者はサイコパスであると、私は思っています。

 

奇しくも、皇統問題に対してサイコパス的主張を持つ連立政権が誕生した日に、歴史に対する「認知の歪み」が顕著なケースを描いた神功皇后論が雑誌掲載されたのは、なんと大きな皮肉であろうかと思わずにいられません。

 

サイコパスと対峙するには、現実認識や道理にどこまでも忠実な「バカ」になるしかない。

 

本稿中で批判したVS構造になぞらえるなら(笑)、日本の伝統に則った「双系」に基づく「愛子さまの立太子」を望む者と、男系男子固執する者の対立構造は「バカ VS サイコパス」なんです。

 

✨️🙌💎😍❤️おらぁ、死ぬまでバカで生きるぞ!❤️🎉🍖✨️

大須賀淳

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